先日、
フルトヴェングラーの奥様エリザベートさんが亡くなりました。
享年102歳。
第二次世界大戦もフルトヴェングラーと共に生き抜きこの音楽家を身近で知る貴重な存在。
そして没後59年でも愛され続けているフルトヴェングラー。
☆ フルトヴェングラー
奥波一秀 著 筑摩選書
フルトヴェングラーの音楽は単に聴くだけでは断片しか理解できない。
時代背景を知りその演奏に触れるとまた違った形に聞こえます。
この書籍で、また新な事実を知り面白かった。
全く古い話ですがH・シェンカーの音楽理論にフルトヴェングラーは少なからず影響を
受けていると言われます。
現在でも音楽之友社からシェンカー理論の書籍は発売されている。
シェンカーの第9理論に出会ったのはフルトヴェングラーがリューベック時代の1911年。
彼の日記に「フルトヴェングラーが来た30歳の男だ」と書かれておりその後も関係は続いたと言います。
そしてナチスとの関係。
この事は無実が裁判で明らかにされており裁判後の1947年から公の指揮者活動を再開しています。
ヒトラーに最後まで忠誠を尽くしたゲッペルスは几帳面な性格だったのか日記をこまめにつけており
「フルトヴェングラーの第9を聴いた比類のない演奏。深く揺さぶられた。完全に心奪われた。総統も臨席」
「フルトヴングラーが訪ねて来た。いつものように心配事、苦情をどっさりともちこんでくる。しかしほとんどが他人事で彼自身のためである事はほとんどない」など。(恐ろしい)
そして、ゲシュタポの気配を感じスイスに脱出するエピソードは有名。
偉大な音楽家もナチスとの確執に身を削ってしまい終戦の9年後、肺炎のために亡くなります。
20世紀の音楽史上、埋めようもない損失が起こってしまった瞬間だ。
モーツァルトの死によるレクイエムの断筆、またはブルックナーの第9の未完に匹敵すると思う。
私は一度、ハイデルベルクにあるフルトヴェングラーのお墓を訪れたい。
これだけ、夢中にさせてくれた音楽家は他にはいないのである。
失礼を承知で現在活躍の音楽家と比べてもだ。
彼の指揮したリストのレ・プレリュードを聴いてごらんなさい。
心の芯から揺さぶられるあの感覚を体験できるから。
2014年3月3日